哀しい運命の我らが故郷
岡部文夫(1908~90)は、石川県羽咋郡高浜町生まれの歌人です。日本専売公社に勤務、勤務の関係で北信越の各地に住んでいます。こんな一首がある。
――雪ぐにの吾の勤めの四十年越後にはじまり越前に終ふ
岡部さんの言葉にあります。「北陸に土着の者にしか作れない作品を創りたいといふのが私の長い間の念願であつた」と。彼にはこの地を詠んだ佳い歌が多くある。なかでも雪の歌でしょう。
今日聞けば今日またひとり屋根雪のなだれに会ひて老の死にたる
雪ぐにに住むもおのれの業(ごう)としてきびしき冬を堪へつつ生きむ
ふぶきつつ雪のはげしきかかる夜に死ぬこの者もまた業(ごう)ならむ
雪ぐに育ちのわたしは、これらの歌に38年か56年の豪雪を思うのですが、思い描けましょうか。
それはさて。岡部さんの歌集『能登』(昭和60年)にこんな歌がありました。
――立石(たついし)のこの海の村原電を誘ひて道の竣(な)るを
――増殖炉また立つといふ危ふきも貧しきゆゑに
立石は、敦賀半島の突端の小集落。であればいまここでこの歌意をあえて説明するまでもないでしょう。
じつに哀しい運命であります、いつも我らが故郷はというと。
(12・1・16)